帯広百年記念館は、地域の歴史を知るための資料を集めています。では、地域の歴史は、どのような資料から知ることができるのでしょうか。その一つに、「個人の記録(エゴドキュメント)」があります。
例えば、皆さんのご家族、ご先祖のどなたかに、毎日日記を書いていた方がいらっしゃるかもしれません。日記は個人の記録ですが、実は当時の人々の暮らしの様子を今に伝える貴重な情報源です。たくさん印刷されて出版された書籍などと違い、個人の記録は世界に一つだけのものです。その時代に生きた人の暮らしぶりを直に知ることができるところに、日記資料の魅力・特徴があります。
帯広百年記念館は、十勝地方の有名な開拓者である依田勉三の日記を6冊所蔵しています。これを読むと、日々の開拓の仕事だけでなく、当時の移動手段や旅に要する時間、お正月の様子、地震などの災害の様子が記録されており、地域を知るためのヒントがたくさん詰まっています。
依田勉三のような著名人物でなくとも、あるいは明治時代の記録でなくとも、「個人の記録(エゴドキュメント)」の重要性は変わりません。例えば帯広百年記念館には戦時中の町内会の様子を記録した加納左兵衛日記や、昭和30年代の帯広柏葉高校の陸上競技部の様子が記録された阿部重広日記を所蔵しており、それぞれ地域を知るための重要な資料です。
こうした「個人の記録(エゴドキュメント)」には、日記のほかに例えば手紙やなんらかのメモ類なども含まれます。個人的に書き残した日記・手紙等が、歴史を知る上で実は役に立つ、というわけです。
「個人の記録(エゴドキュメント)」は、プライベートな内容を多く含んでいることが想定されます。資料の収集にあたっては、寄贈希望者との十分な協議を行なっています。また、展示の際も個人情報に関する箇所を避けたり隠したりして地域の歴史がわかる点のみを展示するなど、プライバシーに配慮のもと行なっています。
皆さんのお宅に、こうした「個人の記録(エゴドキュメント)」はありませんか? もしお持ちで、そうした資料をどのようにするべきかお悩みでしたら、帯広百年記念館にご相談をいただけましたらと思います。
「個人の記録」の具体例:
【写真1】『渡辺カネ日記』
晩成社の一行として帯広にやってきた渡辺カネの日記。この一冊は昭和初期に書かれたもの。日記の末尾のメモ欄に、「馬鈴薯の栄養パン」「梅干しの秘伝」のレシピのメモが書かれており、当時の料理の作り方を知ることができます。
【写真2−1】【写真2−2】加納佐兵衛日記
【写真3】阿部重広日記