アイヌ語で自然かんさつ図鑑
エゾトリカブト
アイヌ語 / 語源
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【アイヌ語名】スㇽク/surku【日本語名】エゾトリカブト
アイヌ文化
生活
トリカブトは、その根をすりつぶし、矢につける毒として用いました。
根を干してつぶし、粉状にして保存し、使うときには粉を水で練って矢につけました。また、スㇽクには毒性の強いものと弱いものがあるといわれていました(帯広)。
保存するときは、人の手が触れないように、イヌマ(家の中の宝物置き場)の上の方に置いたといいます(本別)。
物語
昔、十勝アイヌが石狩へ戦いに行ったところ、十勝アイヌが負けて男一人だけが犬とともに逃げ帰りました。しかし、狩勝峠の下あたりで動けなくなってしまい、男は持っていた道具を犬に結びつけて放しました。村まで帰りついた犬を見た人びとは、戦いに行った人びとに何かあったに違いないと大勢で探しに行きました。すると男が倒れていたので、話を聞いてみると十勝側が全滅したとのことでした。そこで戦いに勝つためには強力な毒を持つスㇽクが必要と考え、探しに出かけました。レイサクベツ(豊頃町)あたりに来たとき、どこからかリミㇺセ(危急を知らせる女性の特別な声)が聞こえてきました。その声を探していると、一本のスㇽクが声を出していたのでした。それで、このスㇽクから毒を採り、また石狩へ攻め入ったところ、今度は勝つことができたのだそうです(帯広)。
自然観察
大きいものは高さ2mくらいになるキンポウゲ科の植物です。夏〜秋にかけて花は咲き、園芸種としても親しまれる一方、猛毒があることでも知られています。
北海道に分布する数種類のトリカブトのうち、東部を中心に多いものはエゾトリカブトという種類です。十勝では市街地の周囲でも普通に見かけることができます。
春に芽を出し、垂直にのびたあと、つぼみがつく前に斜めにかたむき、夏に青紫色の花の先の方から咲きだします。
秋に掘り出すと塊根(かいこん:球根)が2個ついており、茎の付いていない方から翌春の新芽がでます。
エゾトリカブトは小さいうちはニリンソウに、成長するとヨモギに似ており、これらと混じって生育することが多いので注意が必要です。