アイヌ語で自然かんさつ図鑑
ヒグマ
アイヌ語 / 語源
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【アイヌ語名】キムンカムイ/kimunkamuy【日本語名】ヒグマ
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【アイヌ語源】キㇺ-ウン-カムイ【意味】山にいる神
アイヌ文化
ヒグマはおもに冬眠中のものを春先に捕獲しました。肉は食料に、毛皮や胆のうは自分たちが使うほか、交易品としても利用されました。
ヒグマはキムンカムイ(山にいる神)、あるいは単にカムイ(神)と呼ばれ、位の高い神として各地で霊送り儀礼がおこなわれていました。特に仔グマを捕獲したときは、1〜2年ほど飼育してから肉や毛皮をいただき、魂をカムイの国へ送り返すイオマンテという儀式をおこないました。この仔グマは親グマの神が人間に自分の子どもを託したものなので、とても大切に育てられました。そして、時期が来るとたくさんのお土産とともに神の国へ送り返されますが、親元へ帰ったクマはもらったお土産を他の神々へふるまい、人間界のたのしさを語るので、それを聞いた神々もまた人間界へ遊びに来るといわれていました。
名称
クマは年齢や住んでいる場所などによっていろいろな名前がありました。例えば仔グマは「エペㇾ」、年寄りのクマを「クチャン」、山の上にいるクマを「ヌプリパコㇿクㇽ(山の上を守る神)」、山の中腹にいるクマを「ヌプリノㇱキコㇿクㇽ(山の中腹を守る神)」、山の裾にいるクマを「ヌプリケㇱコㇿクㇽ(山の下を守る神)」と呼ぶことがありました。(帯広)
また、太ったクマを「カㇺウㇲカムイ(肉がたくさんある神)」、やせたクマは「サッテㇰカムイ(やせた神)」といいました。このほか冬眠しないクマは「マタカリㇷ゚(冬にうろつくもの)」といい、とても危険なクマといわれていました。(帯広)
自然観察
大きな個体は体長2m以上になる日本最大の陸上動物です。体重は雄が300kg 以上、雌では200kg以上になります。全てのヒグマがこのように大きくなるとは限らず、成獣でも150kgくらいの個体もいます。
ユーラシアから北米まで広く分布し、北海道のものはエゾヒグマと呼ばれる亜種です。雑食性で、環境や季節によって食物を変えます。フキやササなど植物の茎や根を中心に、キイチゴ、コクワ、ドングリなどの果実、アリやハチの巣、魚類や哺乳類など多くのものを食べます。このように、ヒグマが生息する地域では、ほかの生物も豊富に生息しています。ヒグマは学習した食物への執着が強く、この習性が一因で農作物被害や人身事故に結びつくことがあります。
また、何らかの原因で冬眠せずに動き回る個体を「穴持たず」と呼び、危険なクマとして注意を促すことがあります。