十勝のアイヌ文化
十勝の伝説
十勝に伝わっているものがたり
ウサギとシカのおはなし
昔、シカはウサギの足を持っていました。ですから、そのころのシカは冬になっても雪に足をとられることなく、雪の上を自由に走り回っていました。ところが、ある日、ウサギがそのようすを見てシカの足がほしくなりました。そして、シカをだまして足を交換してもらいました。だまされたと気がついたシカは、おこって火のついた棒をウサギにぶつけましたが、耳をかすめただけでした。 それからシカは雪が降るとぬかって歩けなくなり、人間にとられるようになりました。そして、ウサギは耳の先を火がかすめたので、こげたあとがつきそこだけ黒くなりました。
コㇿポㇰウンクㇽの伝説(帯広の伝説)
むかし、然別(しかりべつ)の上流にコㇿポㇰウンクㇽという小人(こびと)が住んでいました。とてもやさしく、ときどきアイヌの人たちに食べ物をさし入れたりしていましたが、姿をあらわすことはありませんでした。ある日、コㇿポㇰウンクㇽが家の入口から食べ物を入れようとしたところを、そこの家の人が姿を見てやろうと手をつかんで家の中に入れました。コㇿポㇰウンクㇽはとてもおこり、「ここはシアンルㇽとよばれるよい所だったが、これからはここをおっぱいが枯れるように運がわるくなるという意味のトカㇷ゚チとよんでやる」といってどこかへ行ってしまいました。それからここはトカチとよばれるようになりました。
サマイクㇽカムイのお話(本別の物語)
むかしむかし、サマイクㇽカムイという名前の神様がいました。ある日、この神様が12匹のオオカミと一緒に本別(ほんべつ)のコタン(村)にやってきました。そのころ、本別には海がありましたが、そこを地面にして村をつくったら人びとがくらせるかもしれないので、本別まできていた海の水をもどすことにしました。すると、雨や雪がふるように空から土がふってきて、人間でも動物でも住むことができるようなところになりました。だから、今でも本別のがけのところからは海の貝などが出てくるのです。
本別をつくったサマイクㇽカムイは、その後もしばらく12匹のオオカミとともにこの地に住んでいました。そして、冬になってシカをとると、オオカミがほえて人間に知らせました。でも、オオカミたちはけっして人間には姿を見せませんでした。アイヌの人たちはオオカミのほえる声が聞こえるとシカの肉をもらいに山へ行き、感謝しながら肉をいただき村へと持ちかえったそうです。
トガリネズミの伝説(帯広の物語)
むかし、トガリネズミがあるいていると、すこしのお米をみつけました。トガリネズミはこれでお酒をつくり、ワシやカケス、カラスなどをまねいてえんかいをひらきました。みんなとても楽しく歌ったり、おどったりしていましたが、そのうちワシとカラスがけんかをはじめました。こまったトガリネズミは助けてもらうためにシギのところに行きました。でも、シギは「よいことがあるときは、さそってもくれないのに、わるいことがあるときだけ来る。そんなところへは行かない。」とおこりました。トガリネズミがしかたなく家にかえってみると、カラスは足をおられて死んでいました。